福武ハウス ― アジア・アート・プラットフォーム2014

アジア・アート・プラットフォームのはじまり アジアの海に漕ぎ出した「福武ハウス―アジア・アート・プラットフォーム」

北川フラム|瀬戸内国際芸術祭総合ディレクター/福武ハウス―アジア・アート・プラットフォーム総合ディレクター

越後妻有の「大地の芸術祭2006、2009」と瀬戸内国際芸術祭の第1回で、日本・外国の第一線画廊の協力を得て、元気のいい作家の個展を「Mobile gallery」としてやってきた福武ハウスが2013年に始めたアジア・アート・プラットフォームは、国と国をつなぐアートプロジェクトとしては画期的な芽を孕むものでした。

①アジアの多種多様な美術組織、財団、NPOが福武財団というアート活動をしている日本の組織と協働して、②共通のテーマで展覧会を行い、③それぞれの国の特色ある料理を出す食堂を、④人口800人という小さな集落の人々と展開し、⑤それを瀬戸内国際芸術祭という国際的な、多くの来客があるイベントのなかで実行し、⑥通年につながる活動として行おうというものです。

この試みが近代化・グローバル化の急激な展開により、それぞれの地域で育まれた独特の文化力が衰退していくなかで、美術のもつ多様な力によって今ひとたび千年以上の長きにわたる土地に根ざした生き方への誇りを持ち直し、生きる希望をわかちあいたい、という瀬戸内国際芸術祭の目的の中から生まれたことは必然的なことだったと思います。

a) 美術は場の特質・場の力を発見します。 
b)それを固有な特質をもつ(他者の)土地で展開するために、その土地の人々の了解を得なくてはならず、そこに文化の違いを超えたコミュニケーションが生まれます。
c)その作品は地域を浮かび上がらせ、土地に根差したものであるために地域の人々は作品づくりに参加し、アーティストにお茶を出したりする――この時、この作品は一人のアーティストのものであるだけではなく、地域の人のものとなるのです。ここに協働という言葉が生まれます。
d)そこに作品を見に来る人がいて、地元の人はその作品について語り、アーティストについて話し、集落について喜んで話します。そこに元気が生まれ、生きる喜びを再認識し、誇りをもつのです。
e)さらにこの作品を守っていく役割を自覚するのです。この時、作品は言わば赤ちゃんのようなもの。赤ちゃんを守りながら、その周りの人はつながっていきます。美術は人と土地をつなげるだけではなく、人と人をつなぐものでした。

この美術の力によって、かつては瀬戸内海という日本列島のコブクロのような豊かで美しい海が、近代化のなかでの都市偏重、海と水の貴重さを忘却してきたことを省み、お年寄りたちの元気を取り戻すことができたのです。この海のつながりをアジアのなかで広げていく大切さと、海のもつ多様性と自然への畏れと感謝の思いをもち、人がそれぞれの場で生きる尊さを感じながら、美術と、その集落にある食を通し協働する、そんな美術が古来からもっていた働きを最小で最重要な単位である集落で実現すること、それが福武ハウスが望むものだと思います。

70億人が住む地球のなかで、美術は一人一人が自然とつながっていることを自覚できる唯一のものだといってよいと思います。地球環境が危機に瀕し、文明の方向が問われていくなかで、美術がもつ働きは極めて多く、大切なものになっています。古来、美術は人類の親しい友だちでした。一人ずつの自然とのつながりが、土地と時間のなかで鍛えられた集落という単位を通し、人類の移動と広がりを分かち持つアジアの海を媒介として動き出した福武ハウスに期待し、できることを少しずつ始めたいと思うのです。

【イメージ】


パートナー

アジア諸地域がつながるプロジェクトとして2013年の夏の瀬戸内国際芸術祭を機に小豆島福田地区の福武ハウス(旧福田小学校)が始動しました。アジアの先進的な7団体がパートナーとして招聘され、それぞれの国のアーティストがプログラムに参加しています。小豆島の現状と比較しながら、グローバリゼーションの波のもたらす一元化へ立ち向かうため、ディスカッションや展示、食のプログラムが行われました。これらのパートナー団体は、それぞれの異なる背景を共有しながらプロジェクトの協働を目指して継続的に交流し、定期的に作品を発表していきます。

香港アートセンター

香港アートセンター

1977年設立。香港アートセンター(以下、HKAC)は、展覧会や美術教育を通じて現代美術の推進を目的に、NGOとして香港社会のための活動を展開しています。 香港内外の美術・文化交流を促進し、地域住民がアートに触れる機会を提供するプラットフォームを役割とし、アジアの現代美術、パブリックアート、コミックアートを推進しています。2000年に創立されたHKACの教育機関である香港芸術学院(HKAS)は、活躍するアーティストが教員をつとめます。
また、HKACでは、国内外での漫画業界の交流や情報交換を目的とした独特なプラットフォーム、「コミックス・ホームベース」も運営しています。

http://www.hkac.org.hk/en/

台湾歴史資源経理学会

台湾歴史資源経理学会

2004年に創設。近隣地区の有形・無形な生活文化の理解、コミュニティ活動の情報を提供し積極的な参加を促し、また関心を行動を呼びかける台湾のNGOです。 現在は、台湾ならびに国際社会において都市部の住民が近隣地区や地域社会とのつながりをさらに深めることに最大の関心を持って活動を展開しています。学会では、地元社会の記憶と独自性を大切にしていく活動を通じて、多様性と人間性を重んじる相互尊重の心を促すことでアジア独自の文化を尊ぶことに貢献できると考えています。

ソウル・アートスペース・クムチョン

ソウル・アートスペース・クムチョン

ソウル・アートスペース・クムチョンは、ビジュアル・アーティストを支援する国際的なレジデンシー・スタジオで、9つのアート・サポート・センターで構成されるソウル・アートスペーシズの一つです。
ソウル市内にある元印刷所を改修した建物に、2009年10月開設。アーティストの美的実験や活動を資金援助するレジデンシー・スタジオとして、これまで24カ国131人のアーティストを支援してきました。
また、アーティストと地域社会との協力や学校教育を通した実験的なワークショップを開催するほか、ビジネス・ベンチャーに発展する可能性のあるテクノロジーベースの独創的な構想への支援にも取り組んでいます。
運営:ソウル市、ソウル文化財団

http://geumcheon.blogspot.jp/

ジム・トンプソン・アートセンター

ジム・トンプソン・アートセンター

バンコク中心部にあるアートセンター。「交流し、影響しあい、対話を重ねる場」として、国内外で急速に評価が高まっています。芸術活動を助成し、現代の文脈の中で現代美術と伝統美術双方に対する一般市民の認識・関心を高めていくことを使命とし、これまでにピナリー・サンピタック、アラマイアニ、クリスチャン・ラクロワ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、モンティエン・ブーンマ、モントリー・タームソムバットなどの展覧会を開催。この他、主な活動は、展覧会に関連した教育プログラムやアウトリーチ・プログラム、会議、セミナー、講演会、ワークショップ、出版物の刊行、ネットワークづくり、国内外の美術団体との共同事業などを展開。
運営:ジェームズ・H・W・トンプソン財団
※タイを含む東南アジアの美術品を収集したアメリカ人実業家ジェームズ・H・W・トンプソンにちなんで名付けられた名称です。

http://www.jimthompsonhouse.com/events/

ザ・サブステーション

ザ・サブステーション

1990年創設。現代美術の独立組織で、シンガポール初の現代美術センターです。創設以来、アートにおけるリサーチ、実験およびイノベーションの推進に努め、国内外のアーティストの支援に当たっています。批判的対話にさまざまに異なる芸術的視点を取り込むことを目指しています。長年、サブステーションでは、シンガポールで最も重要なアーティスト、作家、知識人などとプロジェクトを行ってきました。開催されるプログラムを通じて、新進気鋭の若手アーティストの支援や育成にも力を入れています。

http://www.substation.org/

アジアリンク・アーツ

アジアリンク・アーツ

メルボルン大学に拠点を置く。アジアリンク・アーツは、パートナーシップ、協働、相互関係を理念に、オーストラリアとアジアとの対話を促進し、文化交流そして絆を深め合う機会創出を役割としています。

http://asialink.unimelb.edu.au/

チェメティ・アート・ハウス

チェメティ・アート・ハウス

ニンディトヨ・アディプルノモとメラ・ジャールスマによって創設されたチェメティ・アート・ハウスは、アートの実践、講演、マネジメントの推進を活動の軸にしています。1988年以来インドネシア国内外の現代アーティストの作品を展示・紹介。主催するプロジェクトやレジデンシー・プログラムは、アートのプロセスと社会的な革新的経験に重点を置き、「アートと社会」の改革を課題に掲げ展開しています。
主な受賞は: ジョン・D・ロックフェラー三世アワード(2006年、アメリカ・ニューヨーク)
アカデミック・アート・アワード #2, ジョグジャ・ギャラリー(2008年、インドネシア芸術大学ジョクジャカルタ校)
ジョクジャカルタ・ビエンナーレ・アート・アワード(2010年)
アヂカヤ・ルパ賞・インドネシア共和国観光・クリエイティブ経済省(2014年)

http://www.cemetiarthouse.com/